怒りについて

結城浩

1997年7月1日

「いつも穏やかですねえ」といっしょに仕事をしていた方から言われたことがある。 「やり場のない怒りに襲われたとき、どうしてるんですか」と聞いてくる。 私はちょっと考えてから、 「人に期待していないから、あまり腹がたたないんじゃないでしょうか」と答える。 その方は、「そうかあ、期待しないと腹がたたないのかあ」とえらく感心している。 私は自分の発言を思い返して、何だか冷たい人間のような印象だなあ、 と考え、冗談交じりに、 「奥さんから愛されているから怒らなくてすむんですよ」と付け加える。 「ごちそうさま」と言われた。

私は幸いなことにあまり怒りっぽいほうではない。 怒るのは一年に数回くらいしかないと思う(泣くのはしょっちゅうだ)。

でも、私が怒ると、なんだか悪魔的になるのでいやだ。 私が怒るときには、とても冷たくなる。慇懃無礼になる。 言葉遣いが最高級に丁寧になる。内容は厳しくなる。 周りの雰囲気がいきなり氷点下になる。しーんとなる。

怒りとか恨みとかは恐い。 そのエネルギーの高さとネガティブな向きが恐い。 たとえ正当な怒りでも、その程度を越えたとたん いけないものになるのではないか、と思う。 そして「自分の怒りは正当だ」と思うと、 程度を越してしまうことが多いのではないか。

みなさんは怒りっぽい方ですか。 自分の「怒り」についてどう思いますか。