キーボードと認知地図

結城浩

1999年11月6日

タイピングって楽しくありませんか。 私はすごく楽しいです。 HTMLを書いたり(MakeWebだけど)、プログラムを書いたりするとき、 キーボードの上でパタパタ指を動かすのはなんて楽しいことでしょう。 そういえばタイピングについて、昔文章を書いたなあ…ごそごそ。 以下は1991年2月に書いた文章の抜粋です。

(キーボードと認知地図について)

例えばHとJはどちらも右手の人差指で打つし、 キーも隣同士である。しかしこの2つのキーを混同して誤ることはほとんどない。 私の頭の中ではJのキーは「まっすぐ深く入っていくキー」というイメージで記憶されている。 あたかも井戸につるべを落とすように、杭を地面に打ち込むように、 「まっすぐ深く」打つのがJのキーなのである。 それに対してHのキーはまったく異なるイメージを与えてくれる。 Hのキーを打つとき、私は「左足を一歩左にさっと出す」というイメージを持っている。 それから体力測定の反復横とびのパッパッと足を出す様子もなぜか頭をかすめる。 きっとこれはコントロールキーとHキーをいっしょに使うとバックスペースの働きをすることに 関連があるのかもしれない。 入力ミスを見つけるやいなや私の左手小指はコントロールキーにのび、私の右手人差指はHキーにのびる。 で一文字さっと訂正すると、私の両手は何事もなかったかのように続きを打ちはじめる。 そのようすを、私は(正確には私の脳は)反復横とびのイメージで記憶しているのだろうか。

キーボードを見ていては想像もつかないのがYを打つときのイメージである。Yのキーを打つとき、私は自分の右手の人差指が左手をとびこしているように感じられる。 私の頭の中では右手と左手は並んでおらず、重なっているかのようである。 逆に、あまりはっきりしたイメージが描けないのはXとCだ。この2つは、私の頭の中では左手の下の方でごちゃごちゃ打つとしかイメージされていない。練習しているときもよく間違えたものである。