スタートはたった1ページ

結城浩

2000年11月15日

やっと連載が済んだので、 『Java言語で学ぶデザインパターン入門』の仕事に戻る。 サンプルプログラムのコンパイル方法とIteratorパターンの分をまとめて[DP/Review]No.003, 004として今晩配送の予定。 ああ、楽しいよう(うるうる)。

結城は章ごとにレビューアへメールを送る。 レビューアはそれを読んで思ったことを返信する。 いうなればそれだけなんだけれど、効果はとても大きい。 レビューのポイントは「レビューアを型にはめない」ではないかと思っている。 執筆側の都合で動かすのではなく、レビューアにはできるだけ「フリー」の状態(つまりは本物の本を読むときに近い状態)でいてもらい、 何を感じるか、何を思うか、をできるだけそのまま語ってもらうのがよいと思っている。 ほら、バグ報告などでもそうですよね。オペレータが勝手に現象を解釈するのではなく、 起きたことをverbatimに送り返してもらったほうが役に立つ。それと似ている。 レビューアが感じたことをできるだけ生の形で著者に送り返してもらうと、とても有益だ。 複数人のレビューア(レビューア同士は連絡を取っていない)から同じ場所が「わかりにくい」と指摘されたなら、 それはきっと、本当にわかりにくい部分なのだ。

話は少しそれる。 インターネットを使うと、自分の作品を公開するのはとてもやりやすい。 作品を公開すると、それに興味を持った人からフィードバックがやってくる。 広い世界の中で、その作品に興味を持った人からのメッセージを受け取れる——その人とは一生直接は会わないかもしれないのに——というのは、 何というか、すごい時代だな、と思いませんか。 何かを表現したいと思っている人にとってはインターネットは大きな力となってくれる。 音楽でも、絵画やデザインでも、プログラムでも、文章でも、何でもいいんだけど、 ホームページを作って、 そこで「はい、これが私の作品です」と提示できるというのはすごいことだ。 もちろん、それはある意味でとてもこわいことだ。自分をさらけだすのだからね。 恥をかく場合もあるかもしれない。軽くあしらわれて終わりかもしれない。 あるいは(もっとひどいことに)単に無視されてしまうかもしれない。 でも、いろいろやってみたらいいじゃないか、と思う。 失敗したら、やり直せばいいのだ。

結城のサイト www.hyuki.com ではごった煮のようにいろんなものを公開している。 基本的には自分が書いた文章だけれど、プログラムもあるし、音楽だってある。 天才画家の絵を借りてコラボレーションっぽいページ(ReMix)も作らせてもらった。 つたないながらも翻訳をしているし、へんな童話もある。 信仰の話や、お祈りのページもある(お祈りは作品とはちょっと違うけれど)。 いろいろでこぼこあるけれど、これが、いまの私です。 こういうサイトを作ることができて、私はとてもうれしく思っている。 応援を送ってくださる読者に感謝し、 寛容に見守ってくれる家族に感謝し、 何よりも、神さまに感謝したい。

でも、 現在では何ページあるか自分でもわからない結城のサイトだけれど(何ページあるんだろう)、 1995年のスタート時はたった1ページだったのだ。 1ページに「The Essence of Programming」というタイトルを書いて、 「結城浩」という名前を書いて、本の説明を書いて、連載記事の話を書いて、おしまい。 はいはい、もちろんつけましたよ、アクセスカウンタ。 アクセスカウンタ15。次の日見てみると16。 自分の表示確認だけでアクセスカウンタが増えていくのは、 なかなか悲しいものがありました(^_^;

でも、その経験があるから『Perlで作るCGI入門』が書けたんだし、 CGIを書きたくてPerlを覚え、 その経験を生かして『Perl言語プログラミングレッスン』入門編を書いたんだ。 ホームページで使われているAppletに興味を持って勉強しているうちに、 『Java言語プログラミングレッスン』も書いたんだ。 そう考えると、どんな経験も無駄になっていないなあ、神さまに感謝だなあ、と思うのである。

スタートは、いつも、1ページから。