結城浩
1997年12月24日
クリスマスイブだ。 スーパーでもらってきた風船が割れてしまったので息子がぐずっている。 息子「もう一個、もらって来ようよう」 そこで教会学校のクリスマス祝会に行く前にスーパーに寄ってみる。 幸い一個だけ残っていたので、息子は大喜びである。 息子「よかったね。一個だけあったね」 私「これから教会に行くから、おうちに置いておこうか」 息子「?」 私「教会は人がたくさん来るでしょ? パアン!って壊れたらいやでしょう? おうちに置いておいて、後で遊ぼうね」 息子「うん、そうする」 風船を家に持ち帰り、教会に出かける(かーたん、この風船、見ててね)。 教会学校の先生からクリスマスのお話を聞く。 みんなでページェント(イエス生誕劇)の練習をする(息子も「羊その4」で参加)。 練習のあとはみんなでおやつ。チョコレートにクッキーにリンゴとココア。 ちいさなリースのブローチをもらい、家に帰る。 私「さ、おうちに帰ったら、お手々を洗って、うがいして…」 息子「はーい」 息子は台所に行って手を洗いはじめる。 体調を崩して寝ていた家内に祝会の話をしていると、 台所から「パアン!」という音と息子が大音量で泣き出す声が聞こえてきた。 どどどどと息子がやってきた。風船が割れたショックでもう涙、涙…。 ぎゅううっと抱きしめてやる。 私「風船、割れちゃったの?」 息子「…(ぐすっ)…もう一個…(ぐすっ) もう一個、もらって来ようよう…(ぐすっ)」 私「…あれ、最後の一個だったんだよ」 息子「それでも…(ぐすっ)…もらって来ようよう」 私「…」 息子「ねえ、もらって来て!」 私は息子を抱きしめながら、 こんなに早く割れるなら、教会に持っていかせた方がよかった、 もしかしたらその方が長く遊んでいられたのに、 と胸が痛んだ。 もちろん割れた風船は風船にすぎないのだが、 息子にとってはまるで世界の終わりのように思われるだろう。 もちろん時が経てばすぐに忘れるのかもしれないが、 今のこの涙は、本当の涙なのだ。 私は息子を、もう一度強く抱きしめる。 メリークリスマス。