結城浩
2001年2月23日
ある方からの質問 先日「書籍を出版しませんか」という打診をある会社から受けました。 原稿料の相場というのはどうなっていますでしょうか。 いくらだったら引き受けてよいものでしょうか。 1ページ何円という指針はありますか。 結城の返事 結城浩です。 メール感謝します。 本を出すというのはとてもすばらしい仕事だと思います。 一方、本を作ることに対する姿勢は人によって大きく異なるものですから、 どういうときに引き受けるか、というのを一般的に言うことはできません。 以下、断片的ですが私の考えていることをお書きします。 ●信用できる出版社、実績のある出版社から 結城も出版業界全体に詳しいわけではありませんが、 本を出すというのは時間も労力もたいへんかかるものですから、 信用できる出版社、実績のある出版社から出すのがよいと思っています。 具体的には、自分が「よい本だな」と感じられる本を出している出版社です。 それから、結城は幸い、 雑誌連載でも書籍でもすばらしい編集者とお仕事させていただいていますが、 編集者の力量というのは(プログラマ同様)非常に差があり、 よい編集者は実は少ないのではないか、と思っています。 ●原稿料よりも「よい本」が作れそうかを重視 原稿料(印税)がいくらだから引き受ける、 という判断を結城はこれまでやったことがありません。 (ある意味で「プロ」ではないのかもしれませんね) 結城は「原稿料の多寡」よりも「よい本が作れそうかどうか」を重視します。 1冊の本で得られる収入は知れています。 大事なのは「この著者の本は信頼できる」という評価ではないか、 と結城は考えています。 その方が、長期的にはよい結果となると思っています。 「よい本」という言葉の意味は人によって異なるかもしれません。 結城は「本は作品である」と思っています。たとえ技術書でも、です。 だから、結城は、単に情報を伝えるだけ、知識を伝えるだけの本ではなく、 作品としての香りを放ち、何らかの美しさを持ち、 読者にある種の喜びを与えるような本を書きたいと願っています。 結城の書籍に関するスローガンその1: 「本は作品である」 ●原稿料(印税)について 著者が原稿を書き、出版社は著者にお金を払います。 どのような形態で、いつ、いくら払うかは、 著者と出版社との間の契約になります。 つまりは著者と出版社との間の交渉で決まります。 相場ですが、いくらになるかは、交渉しだいで大きく変化します。 本体価格の数パーセントから十数パーセントではないかと思います。 書籍に関して、結城は1ページ何円という計算はしたことがありません。 言うまでもないことですが、実績のある著者、 売れる本を書く著者はいい条件で出版社と契約できます (できる可能性があります)。 形式はいろいろあり、いちがいには言えません。 例をあげてみます。 (1) 売れた分だけ支払う 増刷になればなるほど収入は増えますが、 増刷されなければ、そこまで。 (2) 原稿を買い取る これは(1)よりは高めになります。 でも、増刷になってもそれ以上は入りません。 他にもたくさんの形式がありますので、 担当の編集者に必ず確認します。 結城は常に(1)を選択しています。 そして長く売れ続ける本を書くことを目指しています。 結城の書籍に関するスローガンその2: 「ベストセラーではなくロングセラーを目指す」 以上、何かの参考になれば幸いです。 「よい本」はどの分野でも、いつの時代でも求められています。 あなたのご活躍をお祈りしております。