結城浩
2004年10月4日
昨晩のこと。 子供が眠ってから、家内と2人ダイニングでおいしい煎茶を飲む。
家内「ねえ、次の本はいつ出るの?」
私「いま書いてる」
家内「ふうん」
私「こないだまでどうもうまく行ってなかったんだけど、最近はだいぶなめらかになってきた」
家内「へえ。あなたでもうまく行かないってことあるの。いつも楽しそうに仕事してるみたいだけど」
私「そんなことないって。 最初、自分が思いついたことを形にしようとしていたんだけれど、それだとどうもうまくない。 書いていてしっくりこない。というか…ざらざらの壁に右腕をこすりつけながら歩いているみたいで、 ものすごく痛い」
家内「ふうん」
私「でも書いているうちに、ふと、進め方を変えてみた。 自分の考えを全面に出すよりも、昔から知られている大切なこと——それほど数は多くない——に絞る。 その「大切なこと」をわかりやすく読者に伝えるにはどうしたらよいだろう、と考える。 読者がイメージしやすいように例を厳選したり、述べ方の順序に注意したりする。 飽きないようにクイズ風味も付け加える。そんな風にしてくっきりと「大切なこと」が伝わることに集中する。 …そんな態度で行くようになってから、スムーズに流れるようになった。とても気持ちがよい」
家内「あなたはいつもそういう書き方になるわね」
私「そうかもしれない。 自分のオリジナリティを出そうとするとうまく行かない。 だから、自分のことを忘れよう。 よい素材のことと、その素材を伝える相手…読者のことを考えよう。そこに集中しよう。 そうすると、うまい方向に進むみたいだ」
家内「何だか、うらやましいなあ……で、いつ出るの?」
私「いま書いてる」