結城浩
2003年5月14日
長男「ねえ、お父さん。二進数で数えられるようになったよ」
私「どれどれ?」
長男「(右手の指を折って数える。親指が最下位ビット)これが1でしょ。 これが2 (10)。それから…
3 | 11 |
4 | 100 |
5 | 101 |
6 | 110 |
7 | 111 |
8 | 1000 |
9 | 1001 |
10 | 1010 |
11 | 1011 |
12 | 1100 |
13 | 1101 |
14 | 1110 |
15 | 1111 |
…っと」
私「うんうん、そうだね」
長男「へへ」
私「じゃあ、クイズね。いま1から15まで数えたよねえ」
長男「そうだね」
私「親指を折ったときの数、ってどんな数?」
長男「え? ええと…1でしょ。3 (11)でしょ。それから…5 (101), 7 (111), 9 (1001), …わかった。奇数だ」
私「大正解です。それでは、親指を折らないときの数は?」
長男「偶数だよ」
私「その通り。0のときはどうかな?」
長男「指折っていない。あれれ?0は偶数でも奇数でもないんじゃないの?」
私「いや、0は偶数だよ」
長男「そうかなあ…どうして?」
私「偶数ってどんな数?」
長男「2で割り切れる数が偶数でしょ?」
私「そうだね。2で割ったときにあまりがゼロになる数、といってもいい」
長男「うーん、そうだね。あまりがゼロって不思議な感じがするけれど、そうだね」
私「じゃあ0を2で割ったらどうなる?」
長男「あれ?0で割っちゃいけないんでしょ?」
私「ちがうちがう。0で割るんじゃなくて、0を2で割るんだよ」
長男「あ、そうか。0を2で割ったら、ゼロ…?」
私「そう。0を2で割ったら、0あまり0だ。だから0は偶数」
* * *
私「じゃあねえ、親指と人差し指の両方を折らなかったときの数はどんな数?」
長男「偶数!」
私「うん。確かに偶数だ。でも偶数全部じゃない」
長男「ええと、0でしょ、4 (100)でしょ、6…は違う。8 (1000)はそうだ。…わかった。4の倍数だ」
私「その通り。4の倍数。22の倍数といってもいい」
長男「どういうこと?」
私「もう少し先まで行けばわかる。親指と人差し指と中指の全部を折らないときの数はどんな数?」
長男「わかってきたぞ…。8の倍数だ!」
私「えらいえらい。その通り。これは23の倍数だ」
長男「うーん…。どういうことかなあ…」
私「10進数で考えてみよう。一番下の位が0になるのはどんな数?」
長男「10の倍数だね。10, 20, 30, 40, ...」
私「じゃあ最後が00になる数は?」
長男「100の倍数だ。100, 200, 300, ...」
私「そうだね。100の倍数、という代わりに102の倍数と考えてみよう」
長男「000で終わる数は、1000の倍数だ」
私「その通り。今度は103の倍数だ」
長男「わかったような、わからないような」
私「ここまでで材料はそろったんだよ。いいかい…」
2進数で、一番下の位が0になる(0で終わる)のは 2の倍数。
10進数で、一番下の位が0になる(0で終わる)のは10の倍数。
長男「そうだったね」
2進数で、00で終わるのは 4の倍数 —— 22の倍数。
10進数で、00で終わるのは100の倍数 —— 102の倍数。
長男「ふんふん」
2進数で、000で終わるのは 8の倍数 —— 23の倍数。
10進数で、000で終わるのは1000の倍数 —— 103の倍数。
長男「あっ、わかってきた。最後のゼロの数なんだ」
私「その通り。一般的に書いてみよう」
2進数で、N個の0で終わるのは 2Nの倍数。
10進数で、N個の0で終わるのは10Nの倍数。
長男「エヌってよくわからないけど、0が続いて終わるよねえ、 そのゼロの数の分だけ、2や10をかければいいんだね」
私「そうだよ。その通り。その『ゼロの数の分だけ』というのをはっきり短く言うために エヌっていう文字を使っているんだ」