結城浩
2004年2月24日
梅田望夫さんの「Blogを書くことの心理的負担とそれを上回る魅力」という記事を読んで少し考えた。 この文章の中には「共通点のない人々に向けて書くということの難しさ」という項があり、 blogを書き続けているうちに疲れ果てていやになってしまうという話題が上げられている。 その原因は「共通点のない人々に向けて書く」ことが難しいから。
で、私は自分のことを考えた。 私はあまりwww.hyuki.comを運営して疲れたり、いやになったことがないように思う。 ほとんど毎日のように日記を書き、あちこちのページを更新していて飽きないし、疲れない(手が痛くなることはあるが)。 それは、読者が絞れているからなのだろうか。 と考えているうちに、私はあまり想定読者をおいていないかもしれないと感じ始めた。
たとえば私がいまこの文章を書いているとき「誰が」読むかを具体的には考えていない。 「読者のことを考える」というのが文章の鉄則だとは知りつつも、具体的な読者は誰もイメージしていない。 しいていえば自分か。自分に対して説明している。 自分に対してていねいに説明している。そして、自分がそれを読む。読み返す。
読み返してみてわからない部分があったり、わかりにくい部分があったら書き直す。 その繰り返しそのものを楽しんでいるように思う。 「わかりにくいったって、自分が考えていることなんだから、わかるはずじゃない」とあなたは思うかもしれない。 でも、ちょっと違う。 つまり、私が読み返すときには、自分の考えていることから情報を得るのではなく、 書かれている文章だけから情報を得ているようなのだ。
読んでいる私は書いている私に言う。 「おい、ここ、意味不明」
そうすると、書いている私は「そ、そうかな」と言いながらバックスペースキーをぱたぱたと打って、 書き直す。読んでいる私は再度読み返し「ふん、まあいいかな」などと言う。 そのやりとりが、どうも楽しいらしいのだ。
そうか。
私はウェブログ・ハンドブックでいう「自分という一人のオーディエンス」に向けて書くのが楽しいのですね。