ジュンケン(長男との会話)

結城浩

2004年9月2日

私「ジャンケンはグー、チョキ、パーの3つの手があるけれど、4つの手を考えたら勝負はどうなるかな。」

長男「ぐるぐるまわるね。」

私「そうだね。手を1, 2, 3, 4だとすると、1よりは2が強い(1→2), 2よりは3が強い(2→3)、3よりは4が強い(3→4), 4よりは1が強い(4→1)。」

長男「うん、そうなる。」

私「対角線はどうだろう。」

長男「対角線?」

私「こういう正方形を考えたときの対角線。」

    1 → 2
    ↑   ↓
    4 ← 3

長男「1対3ってこと?アイコじゃないの?」

私「2と4では?」

長男「やっぱりアイコ。」

私「ふうん…。なんだかつまらないね。」

長男「どうして?」

私「だって、1は2に負けるけれど、4には勝つ。1は1とアイコで、1と3もアイコ。何だかアイコが2つあるのがやだな。」

長男「じゃあ、アイコみたいなのをもう1つ作ればいいじゃん。」

私「あなたはなかなか賢いねえ!」

長男「ふふん。」

私「じゃあアイコじゃなくて、ダッコにしよう。1対3のときはアイコじゃなくてダッコ。」

長男「ダッコ? なんだそりゃ。ダッコのときはどっちが勝ちなの?」

私「どちらも勝ちじゃない。」

長男「じゃあアイコと同じじゃん。」

私「うーん。そうか…(考える)わかった!」

長男「何が?」

私「アイコを0点だと考えるからいけないんだ。アイコは両方が-1点になる。」

長男「ほうほう。」

私「で、ダッコは両方が+1点になる。つまり両方とも勝ちなんだ。」

長男「アイコは両方が負け?」

私「そう。一覧表を作るとこうなる。」

        1      2      3      4
    1  --      -+      ++      +-
    2  +-      --      -+      ++
    3  ++      +-      --      -+
    4  -+      ++      +-      --

長男「「-」というのが-1点を表しているんだね。これは線対称になる?」

私「よく気が付いたね、その通り。ナナメに降りていく線で折ると対称(でも+-と-+はひっくり返るけれどね)。」

長男「対角線のところがアイコだね。--になる。」

私「そう。++のところがダッコだ。こうすると、ジャンケンに必要な条件の一つである「どの手を出しても有利ということはない」が満たされる。」

長男「ふんふん。」

私「ここで「カチ」「マケ」に対応させて「ダチ」「バケ」という用語を作ろう。」

長男「ダチバケ?」

私「カチは、自分が+1で相手が-1だよね。自分がカチなら相手はマケ。」

長男「うん。」

私「ダチは、自分が+1で相手も+1のとき。自分がダチなら相手もダチ。」

長男「ははあ。」

私「バケは、自分が-1で相手も-1のとき。自分がバケなら相手もバケ。」

長男「はいはい。」

私「そうすると、上の表を見ると、1の手を出した人は、1, 2, 3, 4に対してそれぞれ「バケ」「マケ」「ダチ」「カチ」の4通りになる。」

長男「まあ、そうだね。」

私「どの手を出しても、相手の4種類の手に対して「バケ」「マケ」「ダチ」「カチ」の4通りになる。」

長男「ふんふん。それで?」

私「それだけ。何となくきれいになったって感じがする。」

長男「がく。」

私「ところで、このゲーム、ジャンケンに似ているけれどちょっと違う。何て名前をつけたらいいと思う?」

長男「(考える)うーん、元のジャンケンがどうしてジャンケンって言うかわからないから…。」

私「そうだねえ、確かに。」

長男「ジュンケン(順拳)って感じかな。」

私「ふんふん、何となく雰囲気は出てるな。」