結城浩
2002年3月13日
こんばんは。結城です。 いかがお過ごしですか。 私は、今週もなんだかんだと忙しい一週間でした。 あなたはいかがでしたか。 いま書いている本の話をしますね。 私はいま、プログラミングの本を書いています。 本の名前は『Java言語で学ぶデザインパターン入門』マルチスレッド編 というようなものになると思います。 この本を読むのはきっと、 プログラミングあるいはソフトウェアの設計をする人です。 でも。 私は書きながら「お話」を書いているような気分になります。 私はよく、7歳の長男と2歳の次男を寝かしつけるときに絵本を読みます。 例えば、プーさんや、ナルニアや、ドリトル先生や、 『パンやのくまさん』などですね。 私の左に長男が寝て、私の右に次男が寝て、私は絵本を読んでいく (次男はときどき、ごろごろと転がっていっちゃうのですが)。 絵本(よい絵本、ということです)は繰り返しの朗読に耐えるようにできています。 使われている表現、言葉のリズム、話の流れや間合い、 そのどれを考えても、よく練られて書かれています。 よい絵本を朗読するのは、ですからとても大きな喜びであり楽しみとなります。 そして。 そんな風に子どもに絵本を読み聞かせながら、 私は自分が本を書くための練習をしていることに気づきました。 絵本で、舞台設定や登場人物の紹介が行われます。自然に、楽しげに。 朗読している私の心には、そのリズムが刻まれます。 そして、私がプログラミングの本を書いているときに、 そのリズムが顔を出すのです。 プログラムに登場する事物——オブジェクト——たちが、 まるで絵本の登場人物のように感じられてくるからです。 私は、プログラムの解説をしているつもりだったのに、 気がつくと、まるで絵本の朗読をしているような気持ちになる。 息を凝らし、耳をすませている、愛する子どもたちに、 読み聞かせをしている…そんな錯覚に襲われるのです。 いつも私の話ばかりでごめんなさい。 最近のあなたは、いかがですか? それでは、また。おやすみなさい。 (にっこり)