結城浩
2001年9月3日
例を考えるのは難しい。 過不足ないサンプルプログラムを作るのは本当に難しい。 本質的に困難な仕事だと思う。 なぜ困難かというと、ちょっと油断すると、 そこで解説したい以上の情報が紛れ込むからだと思っている。 読者の気をそらす情報が紛れ込むから。 いま著者が語ろうとしている内容からはずれた何かが紛れ込む。 そして、その困難さは、意外なことに心の弱さから生まれる (この話、何度も書いているような気がするな)。 一言で言えば「簡単なことを書いたら馬鹿にされるのではないか」という恐れだ。 何かスーパーなこと、きらきら輝くような何か、人目を引き、驚かすような話、 そういうのを盛り込まなければならないような錯覚にとらわれるのだ。 その結果、てんこもりで何が大事かわからないようなサンプルができあがり、 著者の知ったかぶりが鼻につく文章ができあがる。 私は何とかしてそこから逃れたいと思っている。
自分が解説しようとしている内容が、 十分に意味のあるものなら、 解説者がどらや太鼓を鳴らさなくてもよいはずなのだ。 一度に一つのことを伝える。 本質的な部分に焦点をあて、それをよく表している例を考える。 そのためには本質的な部分は何かをよく理解している必要がある。 そしてそれを磨き上げて、でも力を入れすぎず。 あたかも、ポケットからふと取り出したかのようにさりげなく、 読者の前にそっと示すことができたなら素敵なのだけれど。
シンプルなサンプル。
私が求めているのはこれだ。