結城浩
2005年1月23日
私「普通の生活では「速さ」というけれど、物理ではもう少し厳密な用語を使う。速度や加速度などだね」
長男「ふうん」
私「速度って何だか覚えてる?」
長男「ええとね、位置の変化、だっけ」
私「そうそう「位置の変化」が「速度」だ」
長男「加速度は?」
私「加速度は「速度の変化」のことだ」
長男「ふうん」
私「三つの量の関係がわかるだろうか」
長男「どういうこと?」
私「位置→速度→加速度という三つの量。位置の変化が速度。速度の変化が加速度」
長男「ねえ「加速度の変化」っていうのもあるの?」
私「それはよい質問。うん、あるよ。イメージがわきにくいし、特別な名前はないけれどね(※加加速度というそうです)。ところで、物理では力を加えなければ、速度は変わらないことを学ぶ」
長男「うーんと…、あ、それは摩擦がないときの話だね」
私「その通り。力を加えなければ、物体は静止しているか、等速直線運動をする」
長男「そうだね」
私「これは誰が見つけたんだろう」
長男「えっとー。ガリレオ」
私「何の法則?」
長男「慣性の法則」
私「その通り。速度を変えるためには、力を加える必要がある。そのためにはエネルギーが必要になる(※仕事については省略)」
長男「ふんふん」
私「たとえば自動車。ガソリンを使って走る。ガソリンの化学的エネルギーを変換して走る」
長男「エネルギーはなくならないの?」
私「なくならない。姿を変えるだけだ(※E=mc^2の話は省略)」
家内「でも、車が走った後、エネルギーはどこに行ったの?」
私「音になったり、熱エネルギーになって周りの温度を高くしたりする」
家内「…(納得していない)」
私「人間には使いにくいエネルギーの形になっても、エネルギーがなくなったわけではない。人間にとって使いやすいかどうかということを表現するためには「エネルギーの量」だけでは面倒。そのためにエントロピーという…(以下略)」
* * *
私「さっきの話に戻るけれど、位置から速度を求めることと、速度から加速度を求めることは、数学的には同じだ」
長男「へえ」
私「この計算が、微分なんだ」
長男「えっ?!」
家内「そうなのっ?!」
私「位置を微分すると速度、速度を微分すると加速度が求められる」
長男「積分はどうなるの?」
私「それはとてもよい質問。積分は微分の逆演算。加速度から速度、速度から位置を求めるのが積分」
長男「へえ」
位置→(微分)→速度→(微分)→加速度 位置←(積分)←速度←(積分)←加速度
私「中学校で位置・速度・加速度は学ぶけれど、微分積分は学ばない。でも、微分積分のことがちょっとわかっているだけで見通しがよくなる」
家内「そうね」
私「それはちょうど、つるかめ算と似ている。小学校でつるかめ算は学ぶけれど、連立方程式の解き方は学ばない。実は、連立方程式の解き方がちょっとわかっていると、つるかめ算専用の特殊な解き方を覚える必要はなくなるし、かしこい子にとっては理解が深まる」
家内「ふうん」