深夜に電話が鳴る

結城浩

1997年9月9日

深夜に電話が鳴る。
家内が受話器を取る。
私の胸がざわつく。
家内のひそひそ声に耳をすます。
驚いた顔の家内が私を振り向く。
ある方が天に召されたという知らせ。

家内がお世話になり、
私も一度お会いしたいと思っていた方。
御国で会える約束はあるけれど、
この世ではもう会えない。
不思議な気分。

死、というものがある。
誰がいつ死ぬかは、わからない。

「ありがとうを言うのは今」
「ごめんなさいを言うのも今」

心にこんな言葉が浮かんだ。