結城浩
固有IDのシンプル・シナリオの適用例に関して、 技術的な可能性、合法性・違法性、 それに道義的な良し悪しを議論するための立脚点となる「チェックリスト」を提示します。
まず、このページを読む前に、 固有IDのシンプル・シナリオをお読みください。
このページでは、 固有IDのシンプル・シナリオの「チェックリスト」を提示します。 このチェックリストを使ったからといって、 技術的な可能性、合法性・違法性や道義的な良し悪しがすぐわかるわけではありません。 しかし、状況を整理し、すれ違った議論や問題のすり替えが起きないようにするための 立脚点として用いることができるのではないか、と思っています。
「固有IDのシンプル・シナリオ・チェックリスト」は次のように構成されています。
という3つの事柄それぞれに対して、
という3つの観点から質問文が作られています。
あなたが、固有IDにまつわる議論を目にしたとき、 アリスになったつもりになって、 心の中で
「アイテム・ID読取機・ボブ」に関して、アリスの「把握・同意・拒否」はどうなっているかな、
と考えていただければ幸いです。
書きなぐったものなので、不備や不明点が多々あると思います。 ぜひ フィードバックをお願いします。
なお、このページの作成のきっかけとなったのは、 森山和道さんとのやりとりでした。 感謝します。
アリスは、自分の持っているアイテムが固有IDを含んでいることを知っており、それに同意しているとします。
アリスは、自分の持っているアイテムが固有IDを含んでいることを知っており、それに同意しており、 さらに自分の持っている固有IDがID読取機で読み取られることを知っており、それに同意しているとします。
補足:この部分、チェック1, 2の[拒否]が使えるなら無意味な問いかな、と考えていましたが、 読者の方から「ある特定のボブだけには送ってほしくない」といった「使用者を特定した拒否の自由」を考えれば意味がある、 という指摘をいただきました。なるほど! ご指摘ありがとうございます。
このチェックリストは「固有IDのシンプル・シナリオ」に合致する例に対してのみ利用できるものです。
「…を知っていますか」という表現は、場合によっては「知りえますか」あるいは「容易に推測できますか」と置き換えてもよいでしょう。
もしも、アリスが「把握していない」「同意していない」「拒否できない」ことがあったとしても、 すぐに違法であるとか、非道義的だといいたいわけではありません。 チェック1, 2, 3は、あくまで状況や考えを整理するための問いだと思っていただければありがたいです。
ただし、もしも、アリスが把握していない(知らない、知りえない)ことがあったとすると、 それに対してアリスが同意を与えることはできない、ということは言えるでしょう。 知らないことに同意を与えることはできませんから。 キャッチフレーズ:把握と理解は同意に先立つ。
また、もしも、アリスが拒否できないとすれば、同意には意味がありません。 拒否できないのなら、同意する以外に選択肢はないわけですから。 キャッチフレーズ:拒否の自由は同意に先立つ。
このチェックリストでは「固有ID」そのものにどんな情報がのせられているかについては関与しません。
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