ホーム > 翻訳の部屋 > クリエイティブ・コモンズのライセンスをWeblogツールで使うことの危険性 | 検索 | 更新情報 |
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クリエイティブ・コモンズのライセンスをWeblogツールで使っているとする。 Weblogの作者が自分に著作権がない画像を掲載してしまったとき、 ライセンスに従えばその画像を自由に使えると第三者が誤解してしまう危険性が高い、 という話。 そもそも自分に権利がない画像を掲載してはいけない、という結論。
有名なWeblogツールのMovable Typeには、Weblog作者がCreative Commonsライセンスを選択できる機能があります。
たとえばWeblog作者が「Attribution-Noncommercial-ShareAlike」というライセンスを選んだとしましょう。 そうすると、Weblog作者がそのWeblogツールで公開する記事は、第三者が自由に利用することができます。 「Weblog作者のクレジットを明記して、非商用であり、さらに派生作品も同じ条件で公開する」というライセンスの条件を第三者が守りさえすればよい。 Weblog作者に許諾を求める必要もありません。
Creative Commonsライセンスは11種類あり、自分の好みで選ぶことができます。 また、権利をすべて放棄するパブリック・ドメインを宣言してもよいでしょう。
WeblogにCreative Commonsライセンスが適用されることは、 作品を共有し、派生作品などでクリエイティブな活動を盛り上げていくためにとてもよいことだと思います。
しかし、そこには思わぬ危険性があるので、十分に注意する必要があります。
Weblogツールには画像を公開する機能があります。 もしも、Weblog作者が、自分に公開する権利のない「他人の画像」をWeblogに掲載したとしましょう。 たとえば、雑誌に載っている女の子の画像をスキャナでとって(雑誌に許可をとらずに)Weblogに掲載したような場合です。 これはその画像の著作権に反した行為であり、 場合によってはそのWeblog作者は訴えられたり、罰せられたりすることになります。 通常は、このような行為の結果を問われるのはWeblog作者だけです。
しかしここで、Weblog作者が公開したWeblogには「Attribution-Noncommercial-ShareAlike」というCreative Commonsライセンスがついていたとしましょう。 すると、このWeblogを見た第三者が、掲載された画像を利用してしまう可能性があります。
「あ、この女の子の画像、自分のWebページにも転載して使いたいな。 おお、このWeblogは「Attribution-Noncommercial-ShareAlike」じゃないか。 Webページにこの人のクレジットを明記して、非商用にして、 同じ条件で公開すれば、この画像は使えるんだ。わーい」
その結果、何が起こるでしょうか。 結果として、転載したこの第三者も、 もともとの画像の著作権を侵害してしまうことになります。
誤解のないように書いておきますが、 私は、Movable Typeに反対しているわけでも、 Weblogツールに反対しているわけでも、 Weblogに画像を載せることに反対しているわけでも、 Creative Commonsライセンスに反対しているわけでもありません。 ここで話を整理しましょう。
それでは、Weblog作者はどうしたらいいのでしょうか。 簡単なことです。 「自分に著作権がない画像を、Weblogに掲載するのをやめればよい」 のです。もしどうしても——自分でリスクをおかしても——他人の画像を掲載したいなら、 ほかの人を巻き込まないように 「Creative Commonsライセンスをつけるのをやめる」 のがよいでしょう。
実は、以上の話は、 Weblogツールに限った話ではありませんし、 Creative Commonsライセンスに限った話でもありません。 たとえばGPLで公開しているWeb日記に他人の画像を掲載する場合でも同じことがいえます。 もちろん、画像に限った話でもありません。
要するに、 他人のものを自分が勝手にライセンスはできないよ、 という話なのです。
上の文章では、正しい引用などのフェア・ユースについては特に言及しませんでした。 細かい話をしだすときりがないのと、私自身がそれほどきちんとした議論ができないからです。 上で書いた「Weblogに、自分が公開する権利のない画像を掲載すること——これは問題です」という部分では、 フェア・ユースは除くと考えてくださればよいかと思います。
ご指摘くださった方々に感謝します。
写真の公開に関しては、著作権だけではなく「肖像権」もありますのでご注意ください。 現在の日本では、肖像権は法律の条文としては存在しませんが、数々の判例によって法的に認められているようです。 詳しくは、以下の「肖像権Q&A「肖像権」ってなんですか?」をご参考に。
ご指摘くださった方に感謝します。
この文章は、yomoyomoさんが以前お書きになった 非・一般公開の文書「ぶったくりコモンズ(Uncreative Commons)」を土台として発展させたものです。 以前は、出典を明らかにしないことが利用条件でしたが、 yomoyomoさんご自身が明らかにしていらしたため、ここに感謝しつつ付記します。 yomoyomoさん、いつもありがとうございます。
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