かっこうと紅茶

夢の中の対話シリーズ

結城浩

夏はキャンプの季節。

キャンプといってもキャンプではなく、 暑苦しい首都圏を離れ、涼しい高原で避暑をしながら知的なことを考えようというものである。 普段読めない本を読み、普段話せない人とゆっくり話す。 いつもはないがしろにしてやっつけでやっているプログラムを、腰をすえてやってみる。 そういうことが目的のキャンプだ。

朝、目を覚ます。窓の外から鳥の声が聞こえる。かっこうだ。 窓を開けると高原のすがすがしい空気が流れ込んでくる。 すっきりと目が覚めているけれど、まだ太陽が顔を出してまもない時間だ。 お祈りしていると、香り豊かな紅茶が運ばれてくる。

洗面を終え、すずしい服に着替えて階下のロビーに下りてみると、 驚くことにキャンプ参加者はほとんどみんな起きていて、静かに談笑している。 こういう環境にくると、みんな健康的に早起きになるのかしらん。

さっそく私も会話に加わる。 話題はプログラミングを中心に回っているようだけれど、それにこだわらない。 Javaの実装の話、マルチスレッドとリファクタリングの関係、パターンとAOPの話、パターンとパターンライティングの関係、 文芸的プログラミングとドキュメントの自動生成の話題、文章の長さと「深さ」の関係について、 カントールの対角線論法・チューリングの停止問題・ゲーデルの不完全性定理・チャイテンのΩの話について...。

(2004年7月19日)