校正の実例

文章を書く心がけ3

結城浩

目次

はじめに

このページでは、結城の校正の一部を紹介します。
誤字・脱字の校正は含まれていません。また技術的な内容の校正も含まれていません。
日本語の文章としておかしな例をあげています。

お時間のある人は、結城の「修正後」を読む前に自分で修正してみてください。

おかしな重なりがある文章


修正前 ゼロからCGIを作るのは難しいものですが、すでに動いているものを修正するのは比較的楽なものです。
修正後 ゼロからCGIを作るのは難しいですが、すでに動いているCGIを修正するのは比較的やさしいものです。
解説 「もの」が重なっている。一つ目の「もの」は削除し、二つ目は具体的に「CGI」とした。

修正前 ここでは、<COUNTER>のようにHTMLのタグのような形にしました。その必要はまったくありません。 普通の文章中に登場することのない文字列ならば、何でもいいのです。
修正後 ここでは、<COUNTER>としましたが、普通の文章中に登場することのない文字列ならば、何でもいいのです。
解説 「…のように」と「…のような」が重なっているのを修正した。

修正前 これで、カウンタファイルの内容は、表2-1のデータ形式が保たれて内容が更新されたことになります。
修正後 これで、カウンタファイルの内容は更新されました。しかも、表2-1のデータ形式はきちんと保たれています。
解説 「内容」が重なっているのを修正した。

修正前 元のファイルcgicount.cgiはそのままにしておき、それをコピーして別のファイルを作り、それを変更することにしましょう。
修正後 元のファイルcgicount.cgiはそのままにしておき、それをコピーして作った別のファイルを変更することにしましょう。
解説 「それ」が重なっているのを修正した。

修正前 ここで使った技法を使って、他にどんなことができるのか、一緒に考えてみることにいたしましょう。
修正後 クッキーを使って、他にどんなことができるのか、一緒に考えてみましょう。
解説 「使った」技法を「使って」という重なりを整理した。

修正前 例えば、いま上記の文を10回実行してみます。すると、その結果$xの値は例えば次のように変化します。
修正後 例えば、いま上記の文を10回実行してみると、変数$xの値は次のように変化しました。
解説 「例えば」が重なっているのを修正した。

修正前 ここに並べた色の中から1つランダム(でたらめ)に1個選ばれて、その色がユーザの名前の色となります。
修正後 ここに並べた色の中からランダム(でたらめ)に1個選ばれて、その色がユーザの名前の色となります。
解説 「1つ」と「1個」の重なりを整理した。「色」が重なるのも少し気になる。

修正前 あとは、データベースや表計算ソフトごとのCSV形式のデータファイルを取り込む方法を使って取り込みます。
修正後 あとは、データベースや表計算ソフトからCSV形式のデータファイルとして取り込みます。
解説 「取り込む方法」と「取り込みます」の重なりを整理した。

修正前 人について知りたい人はゲストブックの方を見てください。
修正後 人名を検索したい方はゲストブックを見てください。
解説 「人」について知りたい「人」という部分を修正した。

修正前 文字列$passwordを文字列$saltを使って暗号化した結果を$encpassに代入します。
修正後 文字列$passwordを文字列$saltで暗号化し、その結果を$encpassに代入します。
解説 「を」が重なっているのを修正した。

呼応していない文章


修正前 こういうときに使うのが剰余演算子%です。 剰余演算子というと難しそうですが、要するに割り算の「余り」を得る計算のことです。
修正後 こういうときに使うのが剰余演算子%です。 剰余演算子というと難しそうですが、要するに割り算の「余り」を計算する演算子のことです。
解説 「剰余演算子」が「計算」のことです、というのは呼応していないので修正。

修正前 変数$dispname_tagには、名前($dispname)とメール($dispmail)を合わせたタグを作ります。
修正後 名前($dispname)とメール($dispmail)を合わせたタグを作って変数$dispname_tagに代入します。
解説 「変数には…作ります」という部分が呼応していないので修正。

修正前 回答結果を見せるかどうかをパスワードで守ることができます。
修正後 回答結果はパスワードを入れないと見ることができません。
解説 「見せるかどうか」を「守る」というのがわかりにくいので修正。

修正前 次の章では、パスワードによるアクセス制限を作ってみましょう。
修正後 次の章では、「パスワードによるアクセス制限」を行うCGIを作ってみましょう。
解説 「アクセス制限」を作るのではなく「CGI」を作るのである。

あいまいな文章


修正前 変数$maxlinkは、表示される最大のリンクの数です。もし0にしたら無制限になります。
修正後 変数$maxlinkの値を0にすると、表示されるリンクの数は無制限になります。
解説 何を0にするのか不明なので修正。

修正前 これは、私書箱一覧を表示するから行っている処理です。
修正後 これは、私書箱一覧を表示するために行っている処理です。
解説 「表示するから行なっている」がおかしい文章。

並列になっていない文章


修正前 設問ファイルを元にページを自動生成し、 また収集したデータをテーブルやCSVで表示する方法について学びました。
修正後 設問ファイルを元にページを自動生成する方法や、 収集したデータをテーブルやCSVで表示する方法について学びました。
解説 2つの「方法」を学んだことがよくわかるように修正。

修正前 ここでは、集めた情報をブラウザで見たり、 またデータベースや表計算ソフトへ取り込む方法について考えます。
修正後 ここでは、集めた情報をブラウザで見る方法や、 データベースや表計算ソフトへ取り込む方法について考えます。
解説 「…見たり、…取り込む」という部分がおかしいので修正。

乱れた文章


修正前 サーバ上のデータファイル中には、ユーザが入力したパスワードおよびマスターパスワードは、 すべて暗号化されて記録されます。
修正後 ユーザが入力したパスワードおよびマスターパスワードはすべて、 暗号化されてからデータファイルに記録されます。

修正前 以上でテーブルは終わりで、またフォームも終わりになります。
修正後 以上でテーブルとフォームが終わりになります。

修正前 …修正や削除することはできません。もしもやりたければ、管理者にお願いして…
修正後 …修正や削除することはできません。どうしても、というなら、管理者にお願いして…

修正前 あなたはアンケートを運営し、50人の人々から回答があったとします。
修正後 あなたがCGIを使ってアンケートを実施し、50人の人々から回答があったとしましょう。

修正前 検索処理は専用のプログラムを使い、Perlのスクリプトはそれへの橋渡しを行う方がいいです。
修正後 検索処理は専用のプログラムにまかせ、Perlのスクリプトはそれへの橋渡しとして利用する方がいいです。

修正前 登録用のフォームとリンク集を別のページにしてもいいのです。 登録用のフォームは固定した内容ですから、CGIで出さなくてもいいです。 HTMLファイルを1つ用意すればいいですね。
修正後 登録用のフォームとリンク集を別のページにすることもできます。 登録用のフォームは固定した内容ですから、1つのHTMLファイルにしてしまうこともできます。

苦しい文章


修正前 プログラムは複雑に見えます(そして実際に複雑なのです)が、 要するにそういう細かな動作の制御の積み重ねなのです。
修正後 複雑に見えるプログラムも、単純な処理の積み重ねからできています。

修正前 この掲示板では、個々の記事はファイル上で1行で管理され、1つの記事の情報はコンマで分割されています。 ささやかながら、これはファイル上でどのようにデータが表現される形式かを決めていることになります。
修正後 この掲示板では、1つの記事はコンマで区切られた1行としてファイルに保存されています。 これが掲示板の「データ形式」というわけです。

修正前 まず、Content-typeの出力から始まり、HTMLのはじめの部分の出力は以下のようになります。
修正後 Content-type、空行、そしてHTMLのはじめの部分は、以下のようにして出力されます。

わかりにくい文章


修正前 演算子.=(ドットイコール)は単なる代入ではありません。 これは、文字列の最後への文字列追加を行う代入です。
修正後 演算子.=(ドットイコール)は代入を行うものではありません。 この演算子は文字列を最後に追加するという処理を行います。

修正前 …という形で呼び出すと、この関数の戻り値は配列となり、 それは「区切り文字列」を使って「長い文字列」で区切ったものとなります。
修正後 …という形で呼び出すと、 この関数の戻り値は「長い文字列」を「区切り文字列」で区切った配列になります。

修正前 検索対象ディレクトリ以外にあるファイルを1つだけ検索対象に含めたい…
修正後 検索対象ディレクトリにないファイルを1つだけ検索対象に含めたい…

修正前 HTMLファイルは自分のパソコンで作りますから、そこにファイルが残る可能性があるわけですが、 掲示板の書き込みはサーバ上に作られていきますから、FTPで定期的にgetしておくのがよいかもしれません。
修正後 HTMLファイルはまず自分のパソコンで作ってからサーバに転送しますから、 パソコン上に元のファイルは残っているわけです。 しかし、掲示板の書き込みは最初からサーバ上に作られますから、 FTPで定期的にgetしておくのがよいでしょう。

修正前 これは、たとえ<TITLE></TITLE>の中に改行が含まれていても、 正しくタイトルが取得できるようにするため、また後ほど正しくHTMLタグを除去できるようにするためです。
修正後 この変換には2つ目的があります。 1つは<TITLE></TITLE>中に改行が含まれていても正しくタイトルを取得するためで、 もう1つは、Perlのパターンマッチ機能で正しくHTMLタグを除去するためです。

修正前 第1章では、CGIを始める前、またCGIを作成・公開する手順を解説しています。
修正後 第1章では、CGIを始める前に確認すべきこと、またCGIを作成・公開する手順を解説しています。

欠けた文章


修正前 検索を実行するためには、ファイルからメモリ上に読み込む必要があります。
修正後 検索を実行するには、ページの内容をファイルからメモリに読み込んでくる必要があります。
解説 「何を」読み込むのかが欠けている。

修正前 したがって、機密性の高い情報を守るには適しません。
修正後 したがって、いずれの方法も、機密性の高い情報を守るには適しません。
解説 「何が」適さないのかが欠けている。

修正前 JavaScriptを使うと、通常のHTMLではできないような処理を行わせることができます。
修正後 JavaScriptを使うと、通常のHTMLではできないような処理をブラウザに行わせることができます。
解説 「何に」行なわせるのかが欠けている。

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