プロの編集者

結城浩

2001年4月4日

[DP] 5章、6章、7章、付録とはじめの序章のあたりの校正終了。 編集部へ送信。 残りは8章〜23章…。

いつものようにざらざらした文章を読んでいる。 書いているときにはなめらかなつもりでいるのだが、 編集者からの指摘を受けて校正していると、 なんとざらざら、ぎざぎざした文章なのかと我ながらあきれてしまう。 こんな文章を読ませてしまって申し訳ない。 でも、校正を重ね、読み合わせをしていくうちに、 このざらざらは少しずつ取れていくのが常だ。 めげずに進もう。

レビューアからの指摘は非常にありがたいし、 また実際に役に立っている。 しかし、やはり、プロフェッショナルの編集者の指摘というのはまったく質の異なるものである。 どちらがよい、悪い、ではなく「異なるベクトルを持っている」という感じがする。 文章を読む「プロ」というのは本当にあなどれない。

著者は、編集者からの疑問点を読んで、どう直すか(あるいは直さないか)を編集者に伝える。 このとき、たとえ編集者からの指摘をそのまま採用する場合であっても、 その前後を丁寧に読む必要がある。 文章というのは面白いもので、どうしても書いた人の「癖」が出てしまうからだ。 著者の文章の中にぽこっと編集者の文章が入った感じをなくすためには、 はめこむ文章を著者がきちんと読んで、納得してから入れなければならない。

それから、よりよい解決をするためには、 少し前に戻って文章を書き直したほうがよい場合も多い。 編集者がひっかかった個所は、まさにその文に原因があるのではなく、 その前の部分に原因がある場合が多いからだ。 その文、その段落で言いたいことを、よりよい表現で書き直すのは著者の仕事だ(と私は思っている)。 編集者からの指摘は書き直すべき個所を見つけ出すきっかけなのである。