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今回は、技術系の「メーリングリスト」を利用するお話です。
ペンギンちゃんが結城さんちでお茶を飲んでいる。
ペンギン: ふう、このお茶、おいしいですわね。…あのね、結城さん。コンピュータやプログラミングって本を読んだだけではわからないことがあるんですけど、そういうとき、みなさんはどうなさっているんでしょ?
結城: やっぱり、他の人に聞く、ということが多いんだろうね。
ペンギン: でも、独学している人もいますわね。それから周りに聞ける人がいない、という場合も…。
結城: そういうときに、技術系のメーリングリストに聞くという方法があるよ。
ペンギン: 技術系のメーリングリスト、とはどういうものですか?
結城: ある特定の技術に興味がある人が集まっている仮想的な場所だね。本当の意味で「集まっている」わけじゃないけれど。
ペンギン: どういうことですか?
結城: うん、メーリングリストの仕組みを簡単に図に描いてみると、こうなるよ。 あなたがメーリングリストにメールを一通投稿すると、メーリングリストのサービスがそのメールを参加者全員に配送してくれるんだ。
ペンギン: あらら、全員に配送しちゃうんですか。それって迷惑メールにならないんですか?
結城: いや、メーリングリストに参加している人は、参加者からのメールがこういう風に配送されてくることを知っていて参加するから迷惑メールとはちょっと違うね。
ペンギン: メーリングリストって1つだけなんですか?
結城: いやいや、とんでもない。日本だけでも数え切れないくらいたくさんのメーリングリストがあるよ。おしゃべりを楽しむだけのメーリングリストもあるし、深い議論を繰り広げているメーリングリストもある。
ペンギン: そんなにたくさんあるなら、自分が興味のあるメーリングリストを、どうやって探せばいいんでしょう?
結城: うん、いつものように検索エンジンを使って探す方法があるね。自分の興味がある話題のキーワード(たとえばJavaとかVBとか)に「メーリングリスト」っていうキーワードを合わせて検索してみるといいよ。
ペンギン: ええ、今度やってみますわ。
結城: フリーのメーリングリストを運営しているサービスもあちこちにあるよ。たとえば Yahoo!Japanのeグループや、 FreeMLなどだね。そこで自分の興味に合うメーリングリストを探してみるのもいいだろうね。
☆ ☆ ☆
ふと気がつくとキツネくんが部屋に入り込んでいる。
キツネ: なるほどね。
結城: わ!びっくりした。キツネくん、いつのまに!
キツネ: まあ、気にしない。このお茶、おいしいね。メーリングリストって参加してもあまり役に立ったことないんだよな。しょっちゅうもめごとばかり起こって。
ペンギン: もめごと、って何ですの?
結城: うん、メーリングリストの参加者同士でよく言い争いになったり、文句の言い合いになることはときどきあるね。たいていは不毛な言い争いで雰囲気が悪くなるのが落ちだけれど。
ペンギン: 技術的な議論で、言い争いになるんですの?
キツネ: ペンギンちゃんにはわからないかもしれないけどねえ。人のメールの言葉尻を捕らえて、ああだこうだいう人がいるんだよ。世の中には。それから教えてクン問題もあるし。
ペンギン: 教えてクンって誰ですの?
結城: 教えてクンというのは、技術系メーリングリストに「○○のやりかたを教えてください」というメールを出し抜けに送る人のことだね。
ペンギン: ええ? だっていろんな人のアドバイスをもらいたいから参加する人もいるわけですよね。質問してはいけないんですの?
キツネ: 違うって、質問の仕方がなってないんだよ。
結城: 質問の仕方にもうまい/へたがあって、技術系メーリングリストに慣れていないと、他の人の時間を浪費するような質問の仕方をする場合が多いんだ。この話をすると長くなるから1つだけ例をあげて解説するね。
ペンギン: ええ、ぜひ。
結城: たとえばJavaのメーリングリストに「アプレットをJavaで書きましたが動きません。どうしたらいいですか」というメールが流れたとする。これ、どう思う?
ペンギン: え? 「動きません」とだけ言われても答えられませんわ。どんなアプレットなのか、どんなプログラムを書いたのか、どんなエラーメッセージが出たのか分かりませんもの。そもそも、コンパイルはできたんでしょうか?
結城: そうそう。この質問メールだけでは、何も答えられない。ということは、このメールに答えるためには、他の人が詳しく聞いてあげなくちゃいけない。でもそれは大変な時間の浪費だよ。質問する側がある程度の情報を書いてくれていたら、他の人が有効なアドバイスをできるだろうね。
ペンギン: なるほど、わかってきましたわ。質問するのはいいけれど、適切な質問の仕方をしなさいということですわね。
キツネ: で「質問の仕方がまずいよ」と誰かが親切に指摘すると、 はじめの投稿者が怒り始めたりする。それで話はややこしくなるわけだ。 みんながペンギンちゃんみたいに素直とは限らないからな。
結城: 技術系メーリングリストへの質問については、私が 『技術系メーリングリストで質問するときのパターン・ランゲージ』というページにまとめているのでそちらを見てください。
キツネ: オレは結城さんのページよりも 『真・技術系メーリングリスト FAQ』のほうが好きだな。毒が効いているし。
結城: まあ、好きずきですね。
☆ ☆ ☆
ペンギン: 教えてクンにならないようにするほか、何か注意点はありますでしょうか。
キツネ: 教えてクンにならないだけでも大したもんだよ。
結城: そうだねえ…技術系メーリングリストは質問の場だけではなく有益な情報の交換の場でもあるから、有益な情報が少しでも増えるような投稿を心がけるのは大事だね。
ペンギン: 有益な情報が含まれない投稿なんてあるんでしょうか。
結城: たとえば、他の人の投稿に対して「私もそう思う」とだけ書かれたメールとか、「私はそうは思わない」という一言だけが書かれたメールとか。
ペンギン: 短すぎては駄目ということでしょうか。
キツネ: 違うって。賛成・反対だけじゃなくて、その理由・自分の考え・参考になるWebページや本の紹介などを、ちょっとでもいいから追加しろ、ってことだよ。
結城: そうだね。他の人が読んで意味があることが書かれていれば、短いこと自体は悪くないよ。
キツネ: 何が言いたいのか分からない長いメールは読むのが苦痛だからな。まったく!
結城: 何を怒ってるんだい。
☆ ☆ ☆
ペンギン: メーリングリストをうまく活用するコツってあるのでしょうか。
結城: やっぱり、自分の目的にあったメーリングリストを探し出すことでしょうね。読んでまったく理解ができないメールをもらっても、あまり役にはたたないし。
キツネ: オレは参加する前に過去ログを読むけどね。
ペンギン: 過去ログ?
結城: メーリングリストでこれまでに投稿されたメールの記録だよ。Webページで公開されていることもあるし、あるアドレスにメールを送るとメールで送られてくる場合もある。
キツネ: 過去ログ読めば、自分に合っているメーリングリストかどうかがわかるのさ。
ペンギン: なるほど。
結城: メールを読むだけではなく、必要に応じて投稿してみるのはとてもいい。質問するにしても、メーリングリストのほかの人にわかるように質問メールを書いていると、それだけで問題が整理されるし、いろんな意味で勉強になるものだよ。それに、質問だけではなく、自分の経験談や、有益な情報を流すのもメーリングリストを活発にするいい方法だね。
ペンギン: でも、自分のメールがすごい人数に送られると思うと、どきどきしてしまいますわ。
結城: そこが面白いところですね。住んでいる場所が離れていても、同じ興味をもった人たちと情報交換できるというのは大きな魅力ですよ。
☆ ☆ ☆
結城: じゃあ、今回はキツネくんにまとめてもらいましょう。
キツネ: オッケー!
キツネくんのまとめノート
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(このページは、 日経ソフトウェア誌への連載記事を元に再構成したものです。 Webでの公開を快諾してくださった編集部に感謝します)