『プログラマの数学』出版直前(執筆日記一覧)

結城浩

2005年2月1日〜2月28日

目次

2005-02-01 10:06:43 - 初校

今日から2月。

初校が今週末くらいに出てくるらしい。とっても楽しみ。 2月はこの本の初校と再校で忙しくなりそうです。 3月中にはめでたく出版の運びとなると思います。

「どんな本ができるのですか?」 というお問い合わせをいただいていますが、 価格や発売時期などがもう少しはっきりしてから、 詳しい情報をアナウンスしたいと思います。 もう少々お待ちください。

ところで。

私は繰り返し繰り返し証言したいことがあります。 それは、自分がたくさん本を書くことができるのは 「神さまが祈りに応えてくださったゆえである」 ということです。

現在、私は当たり前の顔をして書き下ろしの書籍を書いていますが、 はじめての本がいちばん大変でした。いまからもう12年以上(!)も前のことになります。 はじめての本を書いているとき、 私は、風の吹き抜ける駅のホームで電車を待ちながら必死で神さまに祈っていました。

「神さま、どうか本を書かせてください。 神さま、どうかこの本を完成させてください。 あなたが始められたことですから、あなたが成し遂げてください。 お願いします。神さま。必要な力を与えてください。必要な力はすべて与えられると信じます。 神さま、どうか、いま書いている本を完成させてくださり、 読者に届けてください。イエスさまのお名前によって、信じてお祈りします。 アーメン!」

神さまは、私のこの祈りを聞いてくださり、 無事に初めての本を完成させてくださいました。 その本が『C言語プログラミングのエッセンス』です。 結城のサイトにつけられている"The Essence of Programming"という副題(?)は、 この書名にちなんでつけたものです。

私は、神さまが本を完成させてくださった恵みを決して忘れません。 ほんとうに感謝しています。 私自身の力はほんとうに小さく、はかないものです。 しかし、神さまが祈りに応えてくださり、 私の祈り以上のものを与えてくださり、 私の一家を支えてくださっていることをここに「あかし」します。

私が祈った祈りがすべて「かなう」とは限りません。 神さまは飼いならされたライオンではないからです。 でも、神さまはすべての祈りを聞いていてくださり、 最善を成してくださると信じています。 かなえられなかった祈りについては、 もっとよい道を神さまが備えてくださっているのだと信じています。 そして、私は、かなえられた祈りを決して忘れず、いつも感謝したいと思っているのです。

2005-02-03 00:00:00 - 書籍『プログラマの数学』

結城浩です。2005年3月下旬刊行予定の最新刊『プログラマの数学』のご紹介をします。

プログラマの数学』は、 プログラミングに役立つ「数学的な考え方」を学ぶ入門書です。

タイトルが示すように、本書の主な対象読者はプログラマですが、 実際にコードを書くプログラマだけではなく、 論理的な考え方や離散数学的な感覚を必要とするシステムエンジニア(SE)にも、 有意義な本です。 C言語風の例が2, 3出てきますが、 読むために特定のプログラミング言語の知識は不要です。

また、ITの分野に直接かかわりがない方でも、 数学に興味を持つ方、知的好奇心を持っている方なら どなたでも楽しめるように書きました。

本書は、定義や証明で埋め尽くされている数学の専門書ではありません。 読者をしりごみさせるような難しい数式はいっさい出てきません。 前提とする知識は+−×÷だけです。 ちょっと踏み込んだ内容(累乗・階乗・対数など)に触れるときには、 必ずていねいな解説を行っています。 ∑や∫はまったく出てきません。

難しい数式の代わりに、わかりやすい図がたくさん出てきます。 たくさんの図を通して抽象的なイメージもつかみやすくなっています。

また、各章には、クイズやパズルもたくさん出てきます。 でも、単におもしろおかしいクイズ・パズルの本ではありません。 問題を通して、楽しみながら「数学の考え方」をしっかり学べるようになっています。

内容も決して「いいかげん」なものではありません。 数学的にも「嘘」はなく、また、現代の情報科学や計算機科学を学ぶ上で 常識として身につけるべき内容をカバーしています。

本書は、高校や大学の情報・数学系の参考書としての役割も果たせると、 自信をもってお勧めできます。 「数学に関心を持ってもらう呼び水」として用いることができるでしょう。 本書を読んでくださった高校や大学の先生からは 「非常に面白い」「学生に読ませたい」 「考えることの楽しさを味わえるので、近年の「理数系離れ」にも役立ちそう」 といったコメントをいただいています。

本書を通して、 数学が持つ美しさと楽しさの一端に触れてもらえれば、 著者としてこれ以上の喜びはありません。

『プログラマの数学』は、2005年3月下旬刊行予定です。 どうぞよろしくお願いいたします。

2005-02-07 11:05:45 - 初校読みは続く

『プログラマの数学』の初校読みを続けています。 まずは、朱を入れながら第6章まで読みました。 やはり初校はまだ「ざらつき」が多いのですが、 それでも、読んでいると、すごく楽しくなってきます。

「数学」といっても、それほど難しい数学が出てくるわけではありません。 長年計算機をやっている人にとっては、 「知っていて当然」とか「当たり前」ということがまあ多いわけです。 でも、ていねいに書き、読み返していると、 その「当たり前」の中にも 「あっ、なるほど。そういえばそうだよな」 という発見があちこちに出てきます。 それが何ともいえず気持ちよいのですね。

「知識が増える」というのとはちょっと違いますね。 発想が変わるというか、 いままで自分の目の前に見えていたものに新しい光が当たるというか、 そういう感じがします。

『暗号技術入門』のときも思ったのですが、 「あっ、なるほど」とか「そういうことだったのか」という感覚って 何にも変えがたい喜びですね。 そういう喜びっていうのは「わかったふりをしない」ことに対する報酬のように思います。

他の人は「そんなこと当たり前じゃん」と言う。でも「わたし」はまだわかっていない。 そういうときに「わかったふり」をしないこと。これはとても大切なことですよね。 自分の頭を使って、納得がいくまで考えること。時間がなくていったん離れるときでも、 「自分はまだこのことはよくわかっていない」と印をつけておくこと。 「でもいつか、何とか理解してやるぞー」と思うこと。 …そういう態度を続けていると、いつの日か本当にわかったときに、大きな喜びが得られるように思います。 その喜びは、他の誰にも奪われることのないものですね。

…というような話題がお好きな方は、以下もどうぞ (^_^)

2005-02-09 09:38:34 - 『プログラマの数学』の中扉イラスト

『プログラマの数学』 の中扉(各章のはじめのページ)に描かれるイラストのラフがFAXで届いたので、 感想と意見をメールで返信。 イラストレータさんが私の意図をうまく汲んでくださり、 予想以上に素敵なイラストになりそうです。 思わずにこにこしてしまいます。 感謝、感謝。

引き続き、たくさんの方から応援のメールをいただいています。 高校生の方からも「買おうと決めました」というメールをいただきました。 一人一人にお返事をするのは難しいですけれど、 とてもありがたく読ませていただいています。

現在bk1や楽天ブックスで予約できるようですけれど、 オンライン書店に出ている情報(内容・価格)はまだ暫定です。 内容(目次)は、以下のページに書いているほうがより現状に近いです。 価格はまだ未定です。

それでは初校読みを続けます。2周目。

2005-02-09 19:58:49 - 『プログラマの数学』ランキング

bk1.co.jpのコンピュータ・インターネット部門 (2005年1月31日 〜 2005年2月6日)で『プログラマの数学』が、 5位にランキング入りしていたそうです…。

ええと、ええと、何と言いましょうか…。 感謝、感謝です。

読者のみなさん、応援ほんとうにありがとうございます! がんばって校正しますね!

追記

科学・技術・医学・建築部門では8位とのこと。 感謝します。

2005-02-10 19:03:45 - 地道に仕事

『プログラマの数学』の索引用のマーキング終了。 3周目の読みに入る。

当たり前のこと、よく知っていることからスタートして、 次第に深みに入っていく。 ふと気がつくと「へえ、なるほど。確かに。改めて言われてみればそうだよね」というところまでたどりつく。 読みながら、そんな感覚を味わう。 自分で書いておいて言うのも変ですが、とても楽しい。

「深く学べる」というのは、 本を書いていて楽しいことの1つですね。 普段は当たり前としていることでも、 本としてまとめるためにきちんと自分の頭で考え、 整理し、文章という形でシリアライズする。 必要に応じて図を描き、例を考える。 そうやっているうちに、題材のことを深く学ぶことになる。

実際、本を書いていると、 多くのことを「発見」するものです。 構造を理解し、意味や意義を見出し、 一般に言われていることの何が正しくて何が誤り(もしくはミスリード)なのかを知る。 参考書に目を通すときも 「ああ、この著者もここの説明で苦労しているな」とか 「あっ、そこを省略するのはずるーい」という風に生き生きと読めるようになる。

「学ぶ」というのはとても楽しい。 時間もかかるし、あまりぱっとしない愚直な作業がたくさんある。 でも楽しい。 たっぷり、たっぷり時間をかけるのがコツではないか、と思っている。 一見、無駄に見えるような手間を山ほどかけると、 深い理解に至るような気がする。 自己満足かもしれないけれどね。

「無駄」という切り口で、文章をいくつかピックアップしてみました。 お時間のある方はどうぞ。

さて、仕事に戻ります。

2005-02-15 10:13:46 - 『プログラマの数学』初校読み合わせ

昨日は『プログラマの数学』の初校読み合わせでした。 比較的短時間(正味約3時間ほど)で読み合わせが終わりました。 感謝します。

初校読み合わせは、 初校を一ページ一ページ一緒にめくりながら、 何千箇所もある修正部分のうち、わかりにくい箇所をチェックしあう場です。 ややこしい数式があまり出てこない代わりに、 説明のための図版が非常に多く、組版の方は大変だったようです。 お疲れ様です。

説明がもたもたしているばかりで無意味な節をばっさり削除したり、 節の順序を入れ替えたり、図版の位置を調節して比較すべき図を並べるようにしたり、 などと、大きい変更ができるのは今回の読み合わせまでですね。

毎回興味深いのは、筆者の私と編集者とで「同じ箇所」を「同じように修正」してくるという現象です。 編集者が「ここは、こう変えてはどうでしょう?」と言うと、私が「ああ、そこはすでに同じように朱を入れています」と答える、 という現象ですね。小さい粒度で言えば文章のあり方について、大きい粒度で言えばこの本のあり方について、 筆者と編集者でイメージが一致しているということなのでしょう。

改めて本書を通し読みしてみると、 この本は、私が想像していた以上の意味を持っているような気がしてきました。 単に「読むと知識が増える」というのではなく、「物の見方が変わる」ような感じがします。 短期的に効くのではなく、長期的に効く、という本になっているようです (まあ、でも、書いている本人の言葉ですから、適当に割り引いて聞いてくださいね)。

今月中には再校の読み合わせがあり、 それが終われば、あとは3月下旬の出版を待つばかりということになります。

たくさんの方から応援のメッセージをいただいております。 とても楽しく、面白い本に仕上がりつつありますので、 もうしばらくお待ちくださいね!

2005-02-27 20:00:00 - 『プログラマの数学』再校読み合わせ

今日は、午前中は礼拝。午後は再校の読み合わせでした。 最初は聖日に仕事の予定を入れることで抵抗があったのですが、 どうしてもスケジュールの都合がつかなかったのでした。 しかし、礼拝の途中で「あっ、今日でなくてはいけないのだ」という確信が個人的に与えられ、 平安と祈りのうちに午後の仕事をすることができました。 感謝します。

読み合わせの前にも「今日の読み合わせの場に主がいてくださり、 聖霊様がよい知恵を与えてくださるように」とたっぷり祈ることができました。 再校の読み合わせは、驚くほどスムーズに進み、 また大きな間違いも何点か見つけることができ、 知恵の源である主をほめたたえる次第です。

読み合わせのあとは、いつものように編集長と食事会。 今後の予定や、抱負についてたっぷりと語り合う豊かな時間となりました。 本当に感謝します。

駅で、編集長とがっちり握手して別れた後、 急に涙があふれてとまらなくなりました。 駅のエスカレータでホームまで下っていきながら、 何ともいえない人生の喜びを味わいつつ、 私の目からはたくさん涙がこぼれてしかたがありませんでした(;_;)

私の日記を読んでくださっているみなさん。

いつも、

いつも、応援のメッセージをお送りくださりありがとうございます。

結城のさまざまな活動に期待してくださり、 励ましのメールを送ってくださり、ありがとうございます。

また、結城にメールを送ることはなくても、 いつも祈りのうちに覚えてくださっているみなさん、ありがとうございます。 結城の日記を読んでくださり、 私のことを気に掛けてくださっているみなさん、ありがとうございます…。

私は本当に小さき存在であり、 自分に委ねられた仕事を愚直に進めていくことしかできないのですけれど、 そんな地味な仕事の中で、これほど大きな喜びを味わわせてくださることを、 あらためて感謝したいと思います。

イエスさま。ありがとうございます。 そして、みなさん。ありがとうございます。 今度の本も、一生懸命書きました。 著者の「一生懸命さ」は書籍の「良さ」の根拠にはならないのですけれど、 ともあれ、神さまが、この本を必要としている読者に届けてくださるようにと、 心から願います。

良い本かって?

ええ、とっても良い本ですとも。(^_^) ぜひ、大いに期待してください。 じっくり味わうことができる、おもしろい本ですよ!

2005-02-28 09:40:08 - サイン本当選者へメール

先ほど『プログラマの数学』サイン本の抽選を行い、当選者へメールいたしました。 想像していたよりも応募数が多かった(40名)ので、当選枠を5冊から7冊に増やしました。 残念ながら当たらなかった方、本当にごめんなさい。

抽選は、結城の恣意的な操作が入らないように(応募者の名前を見て判断することがないように)、 一覧表を作ったうえで、Perlのrandを使って当選者を抽出しました。

応募の中にみなさんが書いてくださった温かい応援メッセージも、感謝して読ませていただいております。

この『プログラマの数学』のアイディアメモの日付のうち、もっとも古いものは2002年の5月。 でもちゃんと書き始めたのは2004年の1月、2月頃から。 もうすぐ2005年の3月ですから、まるまる一年はかけたことになりますね。 昨年の7月、8月あたりが一番つらかったなあ。

『プログラマの数学』の執筆日記