結城浩
私が書いた物語です。
ミルカさんシリーズは、書籍「数学ガール」シリーズ誕生のきっかけとなった物語です。
高校一年の夏。 期末試験が終わった日、 がらんとした図書室で数式をいじっていると、 ミルカさんが入ってきた。
more高校二年の夏。 彼女は、僕のノートをのぞきこんで尋ねた。 「微分?」
more高校二年の秋。 僕は、放課後の図書室で後輩の女の子に数学を教えていた。 簡単な式の展開だ。
more放課後、僕はキャンパス内の並木道を急いでいた。 早足で歩きながら、 ポケットからメモを取り出し、もう一度読み返す。 そこには、たった一行だけ書かれている。
more「この問題読んだ?」 放課後の図書室。 お気に入りの席について、計算をはじめようとしていた僕の前に、ミルカさんが紙を一枚置く。 彼女は立ったまま机に両手をついて、にこにこしている。
more「せーんぱいっ」
校門に立っていると、テトラちゃんがやってきた。 「こちらにいらしたんですね。さっき図書室を覗いたら、いらっしゃらなかったので、どうしたのかなあ……と思っていたんです。 これからお帰りなら、ご一緒しても……あれ?それは?」
moreティナシリーズは、ある村で暮らす女の子の物語です。
「相手とつながっていなければ、相手に何を伝えることもできないだろう。 けれど、相手とはなれていなければ、そもそも相手に何かを伝える意味はない。 私たちは共感する。でもそれと同時に対立もある。 その両方がなければ、その両方を許容することがなければ、 いろんなことがうまくいかないんじゃないだろうか」
more英語の学びを一通り終えたとき、私はどうして村にとどまろうと考えたのでしょう。 勢いがついていたあの頃に、もしも望んだならば《外》へ行くこともできたでしょうに。 《外》へ出て行き、私の新しい暮らしをそこからはじめてもよかったのです。
more数学と女の子が出てくる物語です。
その女の子が乗ってきたとき、 電車の中で空いている席は私の隣だけだった。
more二次会が終わると、友人たちは三次会に流れていってしまった。 時計を見ると10時23分。帰るにはまだちょっと早い。
moreもしもし。こんにちは。 わあ、何だか、ちょっと、感激です。電話で声が聞けるなんて。
moreもしもし、もしもし。 こんちわ。ああ。ああ。そうだ。うん、ワクラス。 ああ。ああ。そう、シダコに聞いて、かけたんだ。
more彼と別れてから三日間、あたしは会社を休んで泣き続けた。
more今日はシダコちゃんが中学三年生のときの話をしましょう。
moreまーくん、お元気ですか。 なんてね。へっへー。
moreあ、す、すみません。 いまグラスをテーブルから落としてしまって。
more「本当に空を飛べるの?」と僕が聞いた。 「ああ」と魔法使いが答えた。
more僕が幼稚園に行っていた頃、和野川には三本の橋がかかっていた。 也屋橋、和野橋、十日橋という名前だ。 和野橋と十日橋の間には夜見橋があったのだが、 一昨年前に流されてしまった。 今は三本しか橋はない。
more森をぬけると、みずうみが見えた。 いや、まだ森はぬけていない。 みずうみの向こうにもまだ森はつづいている。
more「父上、あなたは僕が若いゆえに小さな国しか治められないとおっしゃいます。 それなら僕を試みてください。 北の国、南の国、西の国から、 父上のおっしゃるものを何でも見つけてまいりましょう」
more王子は恐かった。王子は大臣の顔がゆっくり黒ずんでいくのを目のあたりに見た。
more好きな食べ物について書く。 風邪をひいて熱があるときに、すりおろしたリンゴを食べるのが好きだ。
more醜い鳥、ベスタバシャ。
翼は汚れた紫。
左は折れていて、右は曲がってて、
空を飛べないベスタバシャ。
僕は一人で寝ている。二階の畳敷きの僕の部屋だ。
風邪をひいていて、のどが痛い。
どっちに進んでもいい、というけれど、
でも、でも、どっちに進めばいいの?
森を歩いて、とうとう僕は道化に会った。
僕が金を渡すと、道化は無造作に金を取る。
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