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こんにちは、結城浩です。 文章教室の第6回は、「重要点は2回書きましょう」がテーマです。
誰しも、誤解されない文章を書きたいものです。 特に、文章の中の重要点を誤解されたら困りますね。 次の(1)と(2)を比較してください。
(1) 「初期化ボタン」を押して、 青ランプが点灯してから「再生ボタン」を押してください。
(2) 「初期化ボタン」を押して、 青ランプが点灯してから「再生ボタン」を押してください。 青ランプが点灯する前に「再生ボタン」を押してはいけません。
(1)と(2)を比べてください。 (1)は、 「青ランプが点灯してから「再生ボタン」を押す」 ということを言っています。
(2)では、(1)の文に加筆しています。 その加筆は、(1)の文の内容を言い換えた内容になっています。 加筆によって、 「再生ボタン」を押すタイミングがより明確になっています。 「駄目押し」をしている、といってもいいでしょう。
重要点は2回繰り返して書きましょう。 でも、同じ表現を2回繰り返しても意味はありません。 同じ内容を違う表現で2回繰り返すのがよいのです。
おっと、この最後の文はそのまま例になりますね。
(3) 重要点は2回繰り返して書きましょう。 同じ文章を2回書くのではなく、同じ内容を違う文章で書くのです。
(3)の文章では「2回繰り返す」というのが どういう意味なのか、はっきりわかるように 言い換えています。
重要点というのは状況によって変化します。 次の(4)〜(6)を読み比べてみましょう。
(4) 明日は土曜日ですが、全員定時に出社してください。 日曜日に出社を予定している社員も出社になります。
(5) 明日は土曜日ですが、全員定時に出社してください。 土曜日の出社時刻ではなく、 平日の出社時刻ですので、 間違えないようにお願いします。
(6) 明日は土曜日ですが、全員定時に出社してください。 なお、土曜日の定時出社は明日のみです。 来週以降の土曜日は、休日シフトに戻ります。
(4)では、「全員」を重要点として扱っています。 ですから「全員」という言葉の意味がはっきりわかるように、 「日曜日に出社を予定している社員も」と言葉を補っています。
(5)では、「定時」を重要点として扱っています。 ですから「定時」という言葉の意味がはっきりわかるように、 「平日の出社時刻」と詳しく表現しています。 しかも、「土曜日の出社時刻ではなく」とさらに言葉を補っていますね。 これをやりすぎるとくどい文章になりますが、 誤解の可能性を減らすことができます。
(6)では、「明日の土曜日」を重要点として扱っています。 ですから「来週以降の土曜日は違うよ」という文を加筆しているのです。
文章を読み返すときには「読者は、どんな誤解をする恐れがあるだろう」と考えます。 そしてその誤解を防ぐような補足説明を書くのです。 (4)〜(6)の例を使って考えてみましょう。
(4)の文章: 「全員」と書いただけだと、 日曜日に出社予定の人が「わたしは無関係だな」と誤解するかもしれません。 だから、わざわざ「日曜日の出社予定の人も含まれているんですよ」という補足をしました。
(5)の文章: 「定時」と書いただけだと、 「土曜日の出社なんだから土曜日の出社時刻だな」と誤解するかもしれません。 だから、わざわざ「定時っていうのは平日の出社時刻のことですよ」という補足をしました。
(6)の文章: 「明日の土曜日」と書いただけだと、 「来週以降の土曜日も同じように定時出社なのかな」と疑問に思う人がいるかもしれません。 だから、わざわざ「来週以降は違うんですよ」という補足をしました。
文章を読み返すとき、読者のことを思い浮かべてください。 「読者はどういう誤解をするかなあ」と考えるのです。 そして、その誤解を解消するような説明を先回りして加筆しておきましょう。 これが、読者の誤解を防ぐよい方法です。
いまから書こうとしている内容をよく理解し、 その文章を読もうとしている読者をよく理解しましょう。 それが、読みやすく分かりやすい文章を書くコツなのです。
それでは、 具体的に練習してみましょう。
重要点を2回繰り返すように、 次の文章に加筆してください。 この文章が書かれた背景や設定は、 あなたが適宜おぎなって構いません。
研究室を退出する最後の人は、 廊下に面したドアに鍵をかけるのを忘れないようにしてください。
あなたが使っているコンピュータをシャットダウン(終了)する手順を書いてください。 あなたが不在でも、その文章を読めば他の人がコンピュータをシャットダウンできる、 というのがポイントです。 あなたが想定した対象読者(層)を付記してください。