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こんにちは、結城浩です。 文章教室の第9回は、「接続詞をうまく使いましょう」がテーマです。
途中で切れている次の文章を読み、「…」にどんな言葉が続くかを想像してみてください。
(1) 知識を生徒に伝えるのは、教師の大切な仕事です。 しかし、…
(1)の文章は、「しかし」という接続詞で終わっています。 その先の文章は書かれていませんが、 私たちは、そこに「どんな意味の文章が来るか」を想像することができます。
例えば、次の(2)のようになるでしょう。
(2) 知識を生徒に伝えるのは、教師の大切な仕事です。 しかし、教師の仕事は知識を伝えることだけではありません。 教師は自分の「学ぶ姿勢」も生徒に伝えているのです。
「しかし」の後には、これまでと逆の内容が続いていますね。
接続詞は、文と文の関係を表す言葉です。 接続詞をうまく使うと、読者に「次に文章はこっちの方向に展開するのだな」というヒントを与えます。 このヒントは、読者がスムーズに文章を読む助けとなります (ちなみに、(2)では少しパラレリズムを使っていることにお気づきですか。 知識と「学ぶ姿勢」を対比させるため「生徒に伝える」という表現を使っています。 ここを「学ぶ姿勢を生徒に見せる」と書いてしまうと、対比が弱まります)。
「しかし」という接続詞を読んだ読者は「ははあ、いままでと逆の内容がこれから述べられるのだな」と 思います。 「たとえば」という接続詞なら「例が来るんだな」と思いますし、 「また」なら「並置される内容が来るのだろう」と思うでしょう。 「ところで」なら「話題が転換するぞ」と思います。 「したがって」なら「結果が来るぞ」と思います。
たとえば、 以下に例を示します。(例が来るんですね)
(3) 知識を生徒に伝えるのは、教師の大切な仕事です。 たとえば、数学の教師なら数学の公式を教え、有名な証明の技法を教えます。 国語の教師なら…
(4) 知識を生徒に伝えるのは、教師の大切な仕事です。 また、学ぶ姿勢を生徒に伝えることも、教師の大切な仕事です。
(5) 知識を生徒に伝えるのは、教師の大切な仕事です。 ところで、生徒の仕事は何でしょうか。
(6) 知識を生徒に伝えるのは、教師の大切な仕事です。 したがって、教師は知識を伝える技術を磨く必要があります。
接続詞のまずい使い方を示します。 まずは、誤った接続詞です。
×誤った接続詞
(7) 知識を生徒に伝えるのは、教師の大切な仕事です。 しかし、教師は知識を伝える技術を磨く必要があります。
(7)の文章を読んだ読者は「しかし」という接続詞を読んで「次に逆の内容が来るぞ」と思います。 しかし、次に続く文はまったく逆の内容ではありません。 これでは読者は、石につまずいたような気分を味わってしまいます。
接続詞そのものは誤っていなくても、まずい使い方になる場合もあります。 典型的なものは、「多重の逆接」です。
×多重の逆接
(8) 知識を生徒に伝えるのは、教師の大切な仕事です。 しかし、教師の仕事は知識を伝えることだけではありません。 けれども、教師は知識を伝えることをおろそかにしてはいけません。 だが、知識を伝えることばかりに気をとられると生徒の気持ちをつかむことはできません。
(8)の文章を読んだ読者は「しかし」「けれども」「だが」という接続詞の連続に直面します。 こんな文章は、ふらふら車線変更ばかりしている自動車のようなものであり、 読者は、文章を読む気をなくしてしまうでしょう。 考えの流れを整理して「多重の逆接」にならないように気を配りましょう。
それでは、 練習です。
次の文章を、 読みやすく書き換えてください。 構成を変えたり、言葉を補ったりしてもかまいません。自由に書き換えてください。
メールを書くのは難しい。 しかし、気心の知れた人に出すメールを書くのは難しくない。 しかし、短すぎるメールは誤解を生むことがある。 しかし、メールを長くすればいいというものではない。 しかし、どちらかと言えば言葉を多めにするのがよい。 しかし、長いメールは最後まで読んでもらえない。 しかし、構成を工夫すれば読んでもらえる。 しかし、結論を最後に持ってくるのはよくない。
「電子メールのエチケット」 という文章を書いてください。